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靴磨きについて


靴磨きってダルくない?風潮として、持ち物はピカピカに磨き上げておいたほうがいいというのは理解できる。好きな人がいるのもわかる。そういうのはわかるんだけど俺にとってあれはダルい行為であり、できることならやりたくない。

実際、仕事終わりに革靴を磨くとピカピカになって達成感とかはあるけど、別に仕事なんかしなくても靴は磨けばピカピカになるし、なんならプロの磨きと比べると雲泥の差があるし、一度でもクリームを使い切ったことがありますか?俺はいつも半分くらい使うと無くしちゃうんだよね、そういうところだ。

 

だからといって皮がカサカサにひび割れた靴で「これが俺なりの経年変化だよ」などと突っ張るのにも限界がある。知り合いに、おそらく靴を磨いていないんだろうという人がいて、その人の靴はつま先とかかとの部分がスれてハゲあがって白くなってしまっている。本皮とか合皮とかが関係するんだろうか。俺は一切手入れがされていない靴を初めて見たし、靴って手入れしないとああいうふうになるんだと思った。

革靴が大好きな人は、放って置いても靴磨きを勝手に学び、勝手に習得するだろう。しかしウィークデイにしか履かない革靴にそこまで情熱を持てないのはおそらく俺だけじゃないと思う。ライニングもないし、クッションも弱い。慣れるまで時間がかかる上に、傷も付きやすい。なんだ。十代かよ。「まあ強制はしませんが、そんなんで社会でやっていけると思うなよ」みたいな顔で興味のないものを結構な値段で買わされ、しかも手入れを怠るとすぐダメになるって、一体どういう了見なんだろう。「そんな人におすすめ!疲れにくく通気も快適なフェイクビジネスシューズ!」そういうことじゃないんだよ。

 

結局、革靴をきれいに保つために定期的な手入れをせざるを得なくなる。何もせずに履きっぱなしでは、あっという間にボロボロになる。

こんな不便な靴が結構値が張るというのがまた腹が立つよね。いつの日か別の靴を買うために今日靴をすり減らして働いてんのか、俺たちは。そんなわけで、なるべく一足を長持ちさせたい。

これはそういう後ろ向けな手入れだ。

 

ダルい人向けの最低限の手入れ

用意するもの

・馬毛ブラシ

・靴クリーム

・コットンの布(Tシャツの切れ端とか靴下とか)

 

ロフトとか東急ハンズに行くと靴磨きの道具がこれでもかと売られていてこういうのを全部揃えたいなと思わせられる。しかし靴磨き専門の職人ならまだしも、普段の手入れすらダルい人がそんなものを揃えてもホコリを被った挙げ句にどこかへなくしてしまう。

今から初めて靴磨きするんスよ、みたいな場合はスターターキットみたいなのを買ってみるのもいいかもしれない。しかしこれも注意が必要で理由は後述。

今のところダルさにまかせて工程を省いていった結果、馬毛のブラシと靴クリームがあれば、まあなんとかなるのかな、と思う。 

 

馬毛のブラシは、ほこり落としに使われる。柔らかい。他に豚毛のブラシがあって、こちらの毛は硬く、ワックスの後の磨き上げなんかに使われる。俺の経験上、豚毛のブラシは必要ない。ピカピカに仕上げたいなら買えばいいと思うけど。毛の色でグレードが違うとか聞くけど、そんなの気にせず一番安いのを買っていて、まあ問題はない。靴磨きジャンキーからは笑われているのかもしれない。

大きさは手のひらサイズ、中指の先から手のひらの付け根ほどの長さがあればいい。

昔なにかのノベルティで消しゴムほどの大きさのブラシをもらったことがあるけど、使えたもんじゃなかった。つまむようにしか持てないブラシじゃ全然力がかけられない。

 

クリームは靴墨、いわゆる乳化性クリームを選ぶ。ワックスはテカテカピカピカにしたいなら買えばいいと思うけど必ずしも必要ではない。クリーナーもいらないと思う。知らん。俺は使っていない。

 

 

ブラッシング

馬毛ブラシでつま先、かかと、靴の縫い目があるコバ付近は執拗に、他の部分はある程度きれいになるまでブラッシングする。

汚れを落とすと同時に皮の油分を表面に浮き立たせて革靴特有の艶を出す、というのがブラッシングを役割で、とにかくブラッシング。墨塗ったりワックステカらせたりするまえにブラッシングをせよ、と言われた。靴屋の主人に。

 

で、コットンの布で拭く。軽くでいい。全体をさっと拭く。押さえつけてこすりつけるというよりは、力を抜いて磨き上げる。軽くこすった傷なんかはこれで消える。

 

普段の手入れはこれで終わり。一日履いた靴は汗でエラいことになっているから、消臭スプレーなんかをしてしばらく乾かしたらシューツリーを入れて、仕舞う。

この仕舞うのが大事で、一日履いた靴は一日休ませないとすぐにダメになる。これはスニーカーでもなんでもそうだけど、同じ靴を毎日履くのはよくない。絶対に良くない。こんなん誰でも知ってるだろと思うけど知らない人がいたら良くないので一応言っておく。同じ靴を毎日履くのは良くない。ケチで靴に金なんかかけたくないという人ほど靴は複数買って履き回すのがいいよ。

 

クリーム 

クリームを塗るのは最低で月イチくらい、頻度が多くても一週間で一回程度。クリームもつま先、かかと、縫い目があるコバ付近を中心に、薄く塗り込む。なんか靴クリームを塗る用のブラシとかあるけどこれも乾いた布でいい…と思う。駄目なのかな?知らん。俺はそうやっている。

これは皮の油分を補給する目的で行われる。油分がなくなるとカサカサにひび割れたり白く禿げ上がったりする。で、こうなるとなかなか元には戻らない。だから定期的にクリームを塗る必要がある。

だからといってベタベタにクリームを塗りたくればいいかというとそうでもない。

新入社員の頃なんか、とにかくクリームを塗って靴をピカピカにしたかったから、スターターキットみたいなものを買ってかなりの頻度で塗りたくっていたことがある。そうやってろくに油分も落とさずに次から次へと重ねて塗った結果、靴は全面でエナメルのような光沢になったけど、鏡面磨きのような透明感はなく、ただただ下品な輝きを放つ革靴に仕上がってしまった。靴磨き職人が磨き上げた靴の、つま先に向かって徐々に鏡面になっていく、ああいうシズル感は全く無かった。おまけに靴のシワの部分にワックスを塗り込んだりして、ひび割れっぽくなったりもした。そういう勝手が最初はわからない。わからないことをして靴をダメにするなら余計なことはしないほうがいい。余計なことはしなくていいからワックスはいらないと思う。

過剰にクリームを塗って、いいことなんか一つもない。もし過剰に塗りたいなら、クリーナーで汚れとともに油分もしっかり落とし、再び塗る必要がある。しかしそんなことをしなくてもしばらく履いているだけでも革靴からは油分が勝手に抜けていく。ということはクリーナーでせっせと洗い落とす必要はない。必要がないことはしなくていいからクリーナーもいらない。

 

そうは言うけど靴をピカピカにしたい

ちょっと前に結婚式に出ることがあった。その時俺の中では既に上記の磨き方が定着していたんだけど、そういうハレの場でくらいハイシャインで行ってもいいかなと思って、会場近くの靴磨き屋で鏡面磨きをしてもらおうと思った。

しかしいざ靴磨き屋に行くと、鏡面磨きは靴を預かって数日かけて仕上げると言う。エッ!?なんかネットで検索するとワックスとかでチャチャッとできるっぽいじゃん!やってくれよ!と思っていると、普通の靴磨きコースがあって、それなら時間も10分くらい。じゃあこっちの普通磨きコースでいいや。いい塩梅に磨いてくれよ、と革靴を預け、待つこと数分、結構早めに終わって手渡されたのは、先ほどよりちょっときれいになったかな、程度の俺の革靴だった。

おい!何も変わってないじゃん!俺が磨いたのとかなり一緒じゃん!聞くとワックスも使って仕上げているという。そうなのか!ありがとな!

結局、靴をよだれが出てくるようなハイシャインに磨き上げたかったら、最初からそうなっているのを買うか、鏡面磨きを頼んで数日待つか、あるいはペッカペカの靴になるリスクを背負って自分で磨いて学んでいくしかない。

しかし、

・馬毛でまめにブラッシングする

・布で乾拭きする

・たまに思い出したら靴墨を塗る

これだけで結局靴磨き職人の普段磨きとさほど変わっていなかったわけで、そうなるともう余計なことをして靴をベタベタにするよりもむしろあまり手を入れないほうがいいのではないかと思う。

いや、靴磨きが趣味の人とか、クリームの違い、ワックスの性能差、ブラシの使い方、そういうのを全部把握した上で磨き上げるのはそれはいいと思う。しかし、そういうのがダルい人が気まぐれで手を出したところでうまくいくわけがない。うまくいかないことはしないほうがいい。しないほうがいいことを削ぎ落としていった結果、こういう磨き方になった。

 

以上。俺はこれである程度はきれいになるし、ダルくて時間がなくてもささっと済ませることができる。もちろん靴というのはかなり酷使されるアイテムでもあるし、靴が汚いと全体が台無しではある。しかしある程度清潔ならそれでよくて、周りが振り向くくらいピカピカにする必要はない。必要がないなら余計なことはしなくていい。