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ソースカツ丼で育った男が初めて普通のカツ丼を食べた時


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「福井といえばソースカツ丼」とよく耳にする。

かのおぎやはぎも「福井といえばヨーロッパ軒だよね〜」ということをラジオで言っていた記憶がある。ソース?ラジオの話なんてぼんやりした記憶でいいんだよ。

 

自分は福井県出身なのでニュートラルなカツ丼はソースカツ丼という状況で育った。ごはん、ソース、カツ。シンプルかつミニマルで無駄のない構成。どうやらソースカツ丼は福井のソウルフードで、わざわざ遠くから食べに来る人もいるらしい。

しかし俺は幼少時代から「これ、なんか足んなくねえか?」と常々疑問だった。

今にして思えば、ソースカツ丼が成立するのは上質なコシヒカリと長年研究されたソースとフライの技術あってこそ。サク・ジュワ・モチの重層的なコンビネーションを楽しめるのは福井県ならではなのである。

しかしながら幼少期、将来の夢がまだポケモンマスターだった自分は、「なーんか貧相なメシだなあ」と思っており、ソースカツ丼はどちらかというとハズレの部類だった。

 

そんな、食通ぶりたい生意気なクソガキも順当に年を取り、将来の夢がモンスターハンターになるあたりに、県外のどこかの高速道路のサービスエリアで、いわゆる普通の卵とじカツ丼を食べる機会が訪れる。

 

さすがに高校生ともなると、どうやらカツ丼というのは本来卵で閉じて和風の味付けをするらしいというのは小耳に挟んだことがあった。しかし、もしそんなカツ丼が本当に存在するのだとしたら、ソースカツ丼は貧相なものだという幼少期からの仮説に裏付けがされてしまう。

いくら自分のなかでハズレの部類とはいえ、地元のソウルフードを「貧相」と定義づけてしまうのにはさすがのクソガキにもいささか抵抗があった。

地元のことで自虐するけど外の人間が勝手なことを言うな、みたいな。

しかし実際に食券を渡して器を手にする頃には、うっすら漂うダシの香り、重厚に盛られた卵、いつもの刺々しくそそり立っていた衣は汁を吸って芯まで腑抜けてしまっていて、しかも三つ葉まで乗っている、そんな普通のカツ丼に圧倒されてしまった。

 

いつも威厳のある父親が、酔っ払ってへべれけになってしまった姿が重なった。おいおい、いつもの頑固な歯ごたえはどこに行っちまったんだよ。

俺はいけないようなものを見ている気になってフードコートの隅に駆け込んだ。なるべく急いで、ふんわりやさしい卵をズルリとすすり、口の中で溶けるようなロースを力なく噛み、ダシの染みたごはんをかきこんだ。

うまい…そして豪華だ…。

 

かつては「俺はソース一本でやってくんでい!」と粋がっていたはずのカツが、玉ねぎに支えられ、卵に覆われ、ダシのぬるま湯につかり、三つ葉まで添えられ、すっかりポンチになってしまったのに、それでもなおうまい。

幼少期に積み上げられたソースカツの幻想は音を立ててくずれていった。

 

あれから県外で生活したりするなかで、俺の中のカツ丼のイメージは徐々に卵とじに塗り替わり、次第にソースカツ丼を遠ざけるようになってしまった。

グズグズのカツがズブズブの取り巻きとだらしない暮らし。それでもやってけるんだから無駄に突っ張ること無いじゃないか。頑固なままじゃこれから先やってけないよ。山梨が起源?埼玉が元祖?長野がオリジナル?そんなことどうでも良くない?柔軟に行こうぜ。楽しんだもん勝ちよ。人生なんかテキトーでもなんとかなるんだからさ。

 

 

 

 

この前久しぶりにソースカツ丼を食べた。行ったのはレストランふくしん。

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うまいソースカツ丼が食べれる有名店”ふくしん”に行ってきました。~福井市~ | フクブロ~福井のワクワク発見サイト~

 

俺もシャキッとしたヒレ肉みたいにちゃんとしなきゃな、と思った。