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シェイプ・オブ・ウォーター(2018)の感想


シェイプ・オブ・ウォーター(2018)

監督:ギレルモ・デル・トロ

 

アカデミー賞…作品賞を含む4部門受賞

2018年(第90回)アカデミー賞(オスカー)の受賞結果とノミネート

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www.foxmovies-jp.com

 

あらすじ

冷戦下のアメリカ、政府の実験施設で清掃の仕事をしているイライザは喉に傷があり喋ることができない。

ある日施設に持ち込まれたのは南米で見つかった半魚人。囚われて繋がれている彼と意思疎通が出来ることを知ったイライザは交流を深めていく。

 

『シェイプ・オブ・ウォーター』日本版予告編 - YouTube

 

 

人魚姫再解釈

身も蓋もないことを言ってしまえば、

「半分人間、半分魚」

「声が出せない」

「神秘的な力」

など、人魚姫の要素をバラバラにして再構築したような話だ。

そもそもの人魚姫は「あらゆるものを失っても、とにかく人間になりたい、なぜならハンサムな王子様と結ばれたいから」というのが話の筋だが、シェイプオブウォーターは逆に「そうした完璧な人間」の圧力に対抗していくストーリー。

主要キャラクターの多くはマイノリティ側であり、差別を受けるような描写もされる。

「君はどこかが欠けているから私たちのような”普通の人間”と同じ扱いはできません」というようなシーンが各所に挟まれる。

 

しかしながらシェイプオブウォーターも人魚姫と同じように最終的にはロマンチックなラブストーリーに収束していく。

世間一般のマジョリティがこぞって追いかけるものであっても、2人にしかわからない感情であっても、愛の中身は変わらない。

イケメンと若い女でなくても、ロマンスに変わりはないのだ。

 

60年台アメリカ感

衣装や建築、ライトに至ってまで、印象的に画面を彩るのはアイスグリーン、オパールグリーンに近い緑色。

(劇中でも車の色について言ってたけどどんな名前だったか忘れてしまった)

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これに加え、ストーリーが動く場面では色の雰囲気がガラリと変わったりする。

 

50〜60年台にかけて、家電・ファッション・デザインにちょくちょく見られるこの緑色、俺の中ではフレッシュネスバーガーのイメージなんだけど(1960年とか生まれてもいなかったし)、この色の濃度が変化してまるで深海のような息苦しさになったりもする。

それは米ソ冷戦下の誰も信用できないムードであり、今現在のフェイクなインターネットの誰も信用できないムードにも繋がる。

 

ミュージカル

歌・ダンス・いやもっと広く心を揺さぶるものでいいと思うけど、そういったものは人が持っているあらゆる垣根を超えてくる。

憧れであったり、好きであったり、そういう思いは人種や文化は関係がない(半魚人ですら関係ないと言うのがシェイプ・オブ・ウォーターだけど)。

主人公のイライザはミュージカル映画を見るのが好きで、実際に踊ったりもできるが、それを見せる相手は限られていた。

しかし半魚人にはそもそもの「声が出せない」とか「映画に出てくるような若い女じゃない」という前提がないため、イライザは100%で自分の表現をぶつけるようになり、喋れないはずのイライザが唯一声を発するシーンにつながっていく。

 

これらのミュージカルのシークエンスが、”ロマンスは平等に訪れる”という作中の内容とシンクロし、機能していく。

 

マニュアルコミュニケーション 

一方でマニュアルでの接客が確立されたチェーン経営の店舗が印象的だった。

皆一律になることを良しとし、全く同じ内容を繰り返すことが好まれていく。

劇中の台詞から抜粋。

−店員のセールストークを受けて…

客「見ているだけだよ」

店員「こっちだって喋ってるだけだよ」

 

にこやかに版で押したような応対はするが、あくまでマニュアルに過ぎない。にもかかわらず、みんなそれを望んでいる。

全く本心ではない「また来てね」を言って欲しいのだ。

 

今のアメリカの話

とはいえその内容は今の時代感につながるところも多くあり、昔の話だと切り離して考えることはできない。

インタビューや評論なんかでも寓話的などと言われているが、「むかしむかし〜」から始まる普遍的なストーリーでもある。

 

まとめ 

「大人のおとぎ話」とは町山智浩氏の言葉だが言い得て妙だ。

なかなかキツい要素で構成されているものの、ストーリー自体は子供が見たってわかる。

深く考えさせられる内容であるけど、一方で簡単なラブロマンスでもあるのだ。

 

 

 

じゃあ子供に見せるためにそのレーティングを外しちゃうと…

(ネタバレ、白文字)

あのマッチョ軍人の「セックスで全部ねじ伏せてやるぞ!パワー!強い父!」みたいな狂い感が薄れてしまうからだめかなあ。あれがないと半魚人との対比の「お前の喘ぎ声が聞いてみたいもんだよ…グヒヒ」みたいな嫌な感じにならないからねえ。

(ネタバレここまで)

だからこその「大人のおとぎ話」なんだろう。

 

まあ、とはいえ俺が勝手にカテゴライズしている「ラストの後どうすんの映画」群に入ることは確実ではあるが(めでたしめでたしっぽいけどこの後からが大変そうだなあというラストの映画 例:マッドマックスFR)、そんなことを言うのは野暮なので置いておきましょう。

 

あと、一回だけスターウォーズみたいな変なカットの入れ方してたよね。あれはなんだったんだろうか。

 

[最終更新:2018/3月5日]