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SNSは新しい衣服足り得るのか

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ユーキャン新語・流行語大賞に「インスタ映え」がノミネートされた。

今までウェブサービスが起点となって流行った言葉は数あれど、ウェブサービスの用語が選ばれたのは「ユーチューバー」と並んでこれが初めてだ。

「いいね」や「FF外から失礼します」や「既読スルー」がノミネートされてきていないところからも、流行語大賞ノミネートにはそのサービスを利用していない人にも波及している影響力が必要であることが分かる。

新語・流行語大賞

 

→[12/1]大賞になりましたね。おめでとう、知らない誰か。

インスタ映え、忖度が流行語大賞 35億10位入り - 社会 : 日刊スポーツ

 

とはいえインスタグラム、ツイッター、フェイスブックはもちろん、ラインまで含むとかなりの人が何らかの形でSNSを利用している。

特にデジタルネイティブやミレニアルズと言った若年層はSNSがコミュニケーションに欠かせない存在となっているし、実際自分もそうだ。

www.sfg.blue

 

しかし人と人との関わりのためのSNSが、別の側面を持っているのもまた事実だ。

様々なSNSの枠で切り取った各々の生活が、ある種のポートフォリオやその人の作品のようなレベルにまで昇華されているケースもままある。

もちろんそれを利用した企業広告やマーケティングも当然のように行われており、素人とプロがないまぜになった地下格闘技場の様体を為している。

SNSにおいてはいち個人が強大な影響力を持つことも可能なのだ。

このワンチャン性もまた、普及に拍車をかける大きな要因と言えよう。

 

今までなんでもない個人が不特定多数に自分を表現する手段は、主にファッションや作品に限られていたが、SNS上においては、その外側にもう一つ、新たな自分を構築することが出来るようになったのだ。

 

一番外側の自分

今までは、写真や動画によって外側の自分を構築する必要があったのは、主にモデル・映画スター・芸能人のような限られたセレブリティだけだった。

多くの人にとって、写真や動画はアナログで個人的な楽しみに終止していた。

一部の世に出るものは何らかの形で編集を通ったものだけだったし、ほとんどの場合はその機会に恵まれること自体が稀だった。

 

これらがインターネット、そしてスマートフォンの普及によって誰もが発信でき、誰もが受信できるようになった。

そしてフォーマットごとの枠にうまく収まることにより、もう一つ外側の自分を形成していくことが可能となった

その様子を可視化するサムアップやハートマークは、どうすればより好かれるか、誰の真似をすればよいのかを、より明確にしてくれた。

 

「自分がどう思うか」から「人にどう思われるか」へのパラダイム

あなたに社会性があるなら、服を選ぶ際に「人からどう思われるか」という視点は重要だ。

TPOやその日会う人、その日することによって衣服を調節するという作業は社会において心得ておくべき所作だ。

しかしこの”人からの視点”に終止して、自分の視点を持っていない人が増えているように思うのよ。

自分が気に入っているデザイン・素材・雰囲気・ジャンルを把握していない、それらのコンセプトは借り物で構わないというスタンスはもはや当たり前になってしまった。

そのほうが人に気に入られるから。

人に理解されない剥き出しの”自分”に価値などないのだ。

 

村上龍は「自分が欲しいものが分かっていないとそれを手にすることは一生できない」的なことを言っていたが、この言葉が意味をなさなくなってきている。

欲しい自分像をSNSで手軽にコピーできるようになったからだ。

 

いま衣服に求められるのは、他人と違わないこと、変に見られないこと、自分のステータスが反映されていること、ルールから外れないことだ。

そのために、誰に対しても平等な、ロジカルで絶対的なおしゃれの論理がもてはやされることになる。そんなものはどこにも存在していないのに。

 

SNS→現実

インスタと現実の世界観は必ずしも一致しない。

インスタ映えはあくまで仮想空間のものであり、実際に食べておいしいか、行っておもしろいかはあまり関係ない。

ところがこの認識を欠いた人にとってはインスタの世界と現実世界がイコールで結ばれているように見えるらしいのだ。

 

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”Influencer kills” クルーネックTシャツ[FRC142] ホワイト | VANQUISH

 

このような、インスタではウケそうだが現実ではスベっているTシャツも売られていて、しかも人気らしい。

俺としては、2ch語を現実世界に持ち込んでしまうお調子者のノリを強く感じてしまい、ちょっと見ていられない。

しかし、インスタにどっぷりのインフルエンサーからすれば、いいねが集まるこのTシャツは最高にイケてる注目のアイテムなのだ。

 

こうした、楽屋受けしかできない芸人のような、”モチーフを何処かから持ってくるだけ”的なアプローチはやっぱり2chのパロディ文化の影響を強く受けているのだろう。

この類のジョークTシャツが出てくるあたりは「インターネットだな〜」という趣を感じる。

 

現実→SNS

安っぽい服を着ていてもわからないからなるべく価格は抑えて、今どきのデザインで新品のものを買い揃える、というのが現在のファッションにおける鉄則らしい。

プチプラという言葉が浸透しているのも、その概念が必要な人が多いということの表れであるように感じる。

量産型と呼ばれるのはもはや不名誉なことではなくなり、固定された大枠の中の小さな差異こそがその人らしさだと考えれば、わからなくもない。

なぜ女子大生は「量産型化」してしまうのか? 元量産型の女子大生が語る、絶滅した「ガーリー型」の謎と、わたしが量産型になってしまうまで。 | アプリマーケティング研究所

 

じゃあどうやってそこに差異を作り出していくかというと、センスやスキルが必要なく、再現性も高いロゴ・形状至上主義だ

ひと目でそれと分かるわかりやすいロゴと特殊な形状こそが憧れの的でありイケている証となる。

というか、素材や生地感は画面を通しては伝わらない。

縫製やその服のバックグラウンドなんて誰も気にしない。

画面で伝わらないことはどうでもいいことなのだ。

そして、その中でも最上級のロゴと形状を手にするためには、金が必要になる。

 

写真を構築していくのに、カメラや加工、撮影技術ではなく被写体に金をかけるあたり、インスタキラキラ腕時計おじさんとsupremeキッズは同じカテゴリだと言える。

 

 

そして当然現実の”すごい人感”をアピールするためにあらゆる手を使って捏造を繰り返す人もいる。

ファッションはもとより友達も彼女もレンタルできるし、情報商材を売るとなれば札束だってレンタルできる

写真には写らないそういう裏側も、SNSではうまいこと隠すことが出来るので業者は大助かりだ。

 

時代はモバゲーに帰結する

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モバゲーやハンゲームといった、アバターを用いた携帯端末用ゲームが流行したのはもう10年位前のことだろうか。結局SNSでもこうしたアバター制度がリアルに落とし込まれただけで、やってることは変わらないな...というのが俺の感想だ。

要は、パット見でわかりやすく、なにかすごそう感のあるものが注目の的となるし、憧れの対象になるのだな、ということだ。

そしてその豪華絢爛なキャラクターを操作しているのは、リアルでは友達のいない実業家かもしれないし、金銭感覚の狂った無職かもしれない

 

当然アバターは(頑張ったグラフィックデザイナーなどがいるとしても)ただの情報に過ぎず、体温を調節してくれたり先人の工夫が込められていたりはしない。

組み合わせにその人らしさは反映できないし、読み取れるほどのバックグラウンドもない。

一番高いアイテムを提案されたとおりに選択すればいいからだ。

 

その人のスキルやセンスよりも、いくら課金しているかが重要視されているゲームというわけだ。

 

今、SNSはそういうゲームになっているように見える。

外側の自分を、どう構築していくか競うゲームだ。

みんな頑張って金をかけよう!

 

[最終更新:2017/12月1日]