無塩せきガソリン

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個人差の話

衣食住など生活に関するおよそ全てのことには個人差がある。

なのに、あくまで1つの選択肢にすぎない健康法がまるで正解かのように流布されてしまうことも、よくある。

ロシア料理がベトナムで定着しない理由は明確だ。しかしその差異は狭い日本国の中にだって充分すぎるほどあるのだ。

 

 

湯シャン問題

数年ほど前...俺の憶えている限りでは2chまとめがキャズムを超えたあたりで、湯シャンは健康法の一つとして当たり前に語られるようになった。インターネットの力が働いていることは想像に難くない。今まで髪の問題に悩まされ四苦八苦していた人たちに「むしろ洗わなくていいんですよ」という赦しは効いたことだろう。

何を目的として湯シャンをするかは人それぞれだ。頭皮のかゆみ、フケ、抜け毛対策、環境意識。様々な視点からシャンプーをしない理由が語られ、湯のみで流すメリットが広く流布された。

じゃあ湯シャンは今までの当たり前を覆す革新的な健康法かというと、残念ながらそうではない。万人に向いていないからだ。

 

俺の知り合いのAさんは、いつ会っても獣のようなスメルを垂れ流しており、それはドア越しにでも「あ、Aさん来たな」というような拡散性の高いものだった。いかなる時もAさんだと一発で分る臭いに周囲も気付いていたが、社会人の振る舞いとして、面と向かって「Aさんあなた獣のような臭いがしていますよ」という人はいなかった。

ある日Aさんと何でもない会話をしている時に、Aさんは温泉施設まで徒歩5分の立地に住んでおり、数年前から年間パスポートで温泉に入り浸っているという話が飛び出た。

俺は驚くと同時に「風呂入ってないわけじゃなかったんだ」という言葉をぐっとこらえた。

しかしどうも理屈が合わない。毎日温泉成分を肌から吸収しているにも関わらずなぜAさんは獣スメルを撒き散らしているのだろうか。

この疑問に抗えなかった俺はそれとなく「俺って温泉の合う合わない激しいんですよねー」「銭湯なんかの石鹸もやたらキシキシになったりしますよねー」「Aさんって毎日シャンプーしてます?」などと回りくどく聞いていった。そしてAさんからついにこの言葉を聞き出すことに成功したのだ。

 

「ねえ、湯シャンって知ってる?」

 

湯シャンの効能は体質に依るところが大きいと思う。俺なんかは髪が脂ぎってとても過ごせたもんじゃなかった。しかし過激派は1ヶ月我慢すれば体質が変わるという。じゃあAさんの獣のような臭いは一体何だったのか。Aさんはあと何年湯シャンをしていれば体質が変わって獣臭がしなくなるのか。

 

タモリや福山雅治が湯シャンに適しているからといって、万人が湯シャンに適しているわけではない。そんな簡単なことに気づかない人が一定数いるのである。

今までの常識にとらわれてしまうのはたしかに良くないと思う。しかし妙な健康法を過度に信用するのもまた間違っている。

 

誰にでも通用するオシャレになるルール

同様に、「どんな人でもオシャレになる簡単なルール」といった文言もよく目にする。別に大したことはない、昔からファッション誌なんかで言われていたことを焼き直して過激な表現にしてネットに流しているだけだ。ファッション関連の業界人が細心の注意を払い、細かく丁寧に教えていたことを、雑にリライトして主語を大きくしているだけなのだ。

恣意的な理由がないとするのなら、誰にでも通用するという無理筋なワードになぜ引っかからないんだろうか。欧米人と日本人だと体形がぜんぜん違うということは理解できるのに、同じ日本人なら同様の手法が通用すると思っているのか。

 

不特定多数のスナップや、全く別の土地の流行りを見て「こんな手法があるんだ〜おもしろ〜い」などとインスピレーションを沸かせるのとはワケが違う。体形・顔面・思想・好みが一人ひとり違う以上、「誰にでも通用するオシャレのルール」なんてものは存在しないのだ。

 

問題解決のアプローチ

現代人の多くは何か困ったことがあったらとりあえずググるようになった。そしてそれは間違いではない。大まかな回答は得られるだろう。

しかし、まことしやかにささやかれる1つの手法に固執するのは、間違っている。

この食品にはダイエットを促進する効果があるんですよ、というテレビ番組に何回騙されれば気がつくのか。インターネットはテレビ以上に有象無象のカオス状態だと少しでも思わないのか。

個人差がある以上、個人で考えていく必要があるということだ。