無塩せきガソリン

SALT-FREE GASOLINE

MENU

ジーンズ+白Tシャツは本当にスタンダードなのか

f:id:cte26533:20170726125059j:plain 

 

普通の人のコスプレ

「奇抜で目立つよりも、シンプルで浮かないファッションのほうがウケがいい」という一見真理のようで実は根拠がない観念は、2014年頃からのノームコアの流行とミニマリストの増殖を受けてあらゆる層にまで到達し、「別に奇抜な格好をする必要はないんだよ」という赦しを与えることでファッションに興味がない人たちを救っていった。

もともとセレブの遊びだった「普通の人のコスプレ」のノームコアが当の普通の人にまで逆輸入されると、気を大きくした当の普通の人は口々にこう言った。「ファッションこだわってるとか逆にダサくねw」

 

すっかりノームコアが影を潜めた現在、普通の格好をすることはもはや先進的とは見られなくなった。常に変化する量産型に身を委ね、「普通」から脱線しないこと、トレンドを追いかけて新鮮な格好をすることこそがスタンダードに戻ったのだ。こうして普通の格好は「普通」でなくなった。

 

じゃあそもそもの普通の格好とは一体なんだったのか。

 

シンプルは普通なのか

シンプルファッションを心がけよとは様々なメディアが必死に説いている一つの呪詛だ。一般的な感性の大多数にわかるような格好をしろということだろう。それが本当にシンプルであるかどうかは別の問題だ。ワイドパンツはシンプルなのだ。長く垂れたベルトはシンプルなのだ。Tシャツ二枚重ねはシンプルなのだ。

ただメディアごとに提案するシンプルには多少差異があり、雑誌が説いているのは”今季買って欲しい”シンプルファッションであり、ネットでオススメされるのは”まあユニクロって言っとけばどんなバカでもわかるだろ”シンプルファッションであるのは言うまでもない。

実際には色数を抑え、彩度と明度を落とし、柄や飾りを控え、見慣れたシルエットのものを身につければ、シンプルファッションの完成だ。

 

その最たる例がジーンズ+白Tシャツだ。

誰もが見たことがあり、色数も限定され、派手な主張もできない。

 

でも似たような条件ならチノやワークパンツ、ボタンダウンのシャツやポロシャツだって選べるのに、こちらを利用した組み合わせは一向にスタンダード化しない。

なぜ、ジーンズと白Tシャツだけが漠然とスタンダードとされているのか。というか、本当にスタンダードなのか?

 

それぞれの起源

Tシャツ

Tシャツ - Wikipedia

Tシャツの歴史について|オリジナルTシャツ製作・作成の一括見積もり

1920年、アメリカ海兵の下着として発案される。それまで使われていたウールの代わりに綿を用いた。

広げた時に「T」の形をしているからTシャツ。 

シャツ - Wikipedia

それまではYシャツのようなボタンダウンのシャツが用いられていた。伸縮性はほぼない。ワイシャツは「ホワイトシャツ」の略。

かつては日本ではTシャツは完全に下着扱いされており、外に出るなんて恥ずかしいという抵抗があったらしい。それをアメリカ人のような「無頓着さこそがカッコイイ」というアイデアが次第に広まり、誰もがTシャツで外出するようになった。

 

ジーンズ

ジーンズ - Wikipedia

1870年に労働用のワークパンツとして発案される。

1890年に特許が切れ、共有財産化。現在のようなベルトループがある5ポケットのデニム地のパンツになる。

 

ジーンズとTシャツではジーンズのほうが早く普及されており、ジーンズ黎明期当時の写真資料など見てもボタンダウンのシャツにサスペンダーでジーンズを留めている光景がよく見られるが、Tシャツを着ている人は誰もいない。

じゃあこの二つが組み合わさったのって意外と最近だったりするのか?

 

いつ誰が広めたのか

1950年頃のジェームス・ディーンやマーロン・ブランドが、映画でジーンズ+白Tシャツのスタイルを確立したと言われている。当時の粗暴な若者を表現するのに、労働着としての側面を持つジーンズや下着とみなされていたTシャツは最適だったのだ。

そこから戦後に在日していた米軍を経由し、日本に流れてきたと考えられる。

広まったのは入手・着用のコストとカッコよさのパフォーマンス二つのバランス、要はコスパが抜群に良かったからではないか。

 

当時そのスタイルが定着したのには、それまでの社会性のある人は正装をするべきという共通理念に逆らったからだと見る。意図的にちゃんとしないということが、反骨精神があったり既成概念がとらわれないような人にウケたのだと思う。

その後に、60年代にかけてアメリカ由来のファッションはヒッピー、ライダー、アイビー、ワーク...と言った具合に大きく別れていく。その一方で「陰部の露出を避けることによって逮捕されない、楽な格好」として、服飾に興味がない人がなんとなくで作るアメカジは漠然と存在し続け現在に至る。

 

ジーンズが日本に伝わる頃には既に労働着というファクターはほぼなくなっており、粗暴な若者が好むけしからんパンツだったのだ。

 Tシャツも同様に、軍服の域を抜け誰もが手軽に着れるアイテムとなっていた。

ということは、このスタイルは決して必要にかられてとか、環境に適していたからではなく、純粋に楽でカッコよくて逮捕されないから真似されたのだ。

 

最適な組み合わせなのか?

歴史についてはざっとこんな感じ。でもソースは全部ネットだし正直信憑性とか当時の空気感が全然伝わらないから実際のところはよくわからない。服飾の勉強してる人とか、実際にお仕事をされている方、違ったりしたら言ってください。

 

じゃあ、実際その組み合わせは本当に正しく、本当に魅力があり、本当にスタンダード足りうるものなのだろうか?

 

世の中には「なんで?」と言いたくなる奇抜な組み合わせで、すっと腑に落ちるような一体感を持つスタイルが存在する。シチュエーションとアイテムの組み合わせの妙だ。大正ロマン的な袴+革のブーツだったり、不必要に大きな長袖T+半袖Tのコンプトンスタイルだったり、全体的にビリビリに破いてみたり、パジャマでテレビに出てみたり...

ジーンズ+白Tシャツのスタンダード感は結局その範囲内ではないのだろうか。

 

素材

両者とも綿製品だが、ジーンズは2種類の糸で構成される織物、Tシャツは1種類の糸で構成される編物だ。セットアップではない。けど同じ素材なので大きくハズレているわけでもない。ここはアイテムの風合いに依存している。

 

出自

ジーンズはワーク出身、Tシャツはミリタリー出身だ。そりゃあ今じゃすっかり「何も考えなくてもOKなカジュアル」の仲間入りを共に果たしていて、”ドレスとわらじ”とかよりは相性が良いかもしれないけど、厳密には同じカテゴリに属しているわけではない。

 

俺は正直ここだろうなと思う。濃紺〜水色と白って空とか海を構成する色と同じだから。要は、誰もが見慣れているからその組み合わせを変に思わないのだ。色彩的に白黒グレーは明度と彩度の具合が良ければ他のどんな色とでも合う色だ。そしてジーンズも、青と白の組織が混在することによって青く見えているから、白色と相性がいいわけだ。

 

このジーンズの素材感とTシャツの素材感を合わせれば、それなりに整って見えることになるだろう。糸の太さとか、どれくらい着古しているかとか、生地の目の大きさをうまく合わせることができればいい感じになる。これを失敗すると気合入れて揃えてきましたという力の入った感じになってしまったり、逆に貧乏すぎてこれしかありませんというようなみすぼらしさ全開になってしまったりする。バランスが肝なのだ。

 

靴とかアクセサリーは?

ジーンズ+白Tシャツはその組み合わせの妙だけでここまでスタンダードになったかというとそれは違う。綿生地のもつナチュラルな風合いをベースにしてしまえば、ハイテク素材だろうがヴィンテージ風の素材だろうが革素材だろうがなんでも合うのだ。

ジーンズ+白シャツは、靴やアクセサリーを(あまり)選ばないという汎用性によって、ここまで多用されるようになった。

この「合う」という概念は言い換えれば「見慣れている」ということだ。先人たちによる、伝統や常識を完全に無視して「好きなものを身に着けたい!」という実直な欲求のおかげであることを忘れてはいけない。要は本質的にはそんなにかっこよくない組み合わせが多々あるということだ。

 

じゃあ何を合わせたらいいんですか?という問いに対しては、夏なんだったらスニーカーか革のサンダルか、涼し気なものならだいたい大丈夫では?と投げやりになってしまう。

ジーンズ+白シャツに求められている靴やアクセサリーは、そのアイテムの品質や状態に大きく左右されるからだ。

ある程度清潔で、でもさっき買ってきたような新品ではない、なるべくいいもの、という風にしか表現できない。逆に言えば安っぽかったりボロボロだったりするアイテムを取り入れると、それがダイレクトに印象に繋がるからやめておけって感じかなあ...

小説とか歌とかで聞くと♪ボロボロのスニーカー引きずって...とかかっこよく聞こえるけど、傍から見るとホームがレスな感じに見えたりするからね...。

 

とにかく普通に見られたい、群衆の中で浮きたくないというなら、グレーのニューバランスかスタンスミスでいいんじゃねーの?

色やシルエットよりも、品質や状態、つまり値段の高さと手入れしているかが重要だと思うけどなあ。だからめいめい好きなもん履いとけばいいと思う。

 

ジーンズと白Tシャツがスタンダードである理由

ジーンズと白Tシャツがスタンダードである理由は誰もがスタンダードだと思っているからだ。皆が普通だと思うようになればその現象は普通になる。

だが厳密にはジーンズと白Tシャツには厳格な歴史や組み合わせの変遷などは特に無く、吹けば飛ぶような緩い関係性だということは憶えておいたほうがいいのかもしれない。

 

強いてジャンルやカテゴリで分けるならストリートだけど、ストリートこそあらゆるアイテムを無造作に突っ込んでセレブが着ているものを皆が真似するという構図だから、やっぱり強固な関連があるとは言い難い。

ジーンズとはワークシャツ(リアルワーク)やウエスタンシャツ(カウボーイ)、レザージャケット(バイク)のようにカルチャーと密接につながっているアイテムとのほうが相性がいい。白Tシャツならカーゴパンツ(ミリタリー)やスウェットパンツ(アスレチック)の方が親和性が高い。ルーツから見ればね。

でもジーンズに白Tシャツって実際楽でカッコよくて要はコスパがいいわけだから俺だってよく着てるし、ここまでスタンダードという風潮になったわけだ。その基盤が強固ではないと言うだけで、袴にブーツが合うように、なんとなくピッタリハマっているのだ。

 

ただ、構造を理解せずに「なんとなく」だけでものを見ていると、そのうち自分で考えることができなくなるんじゃないの?ということは伝えたい。

このブログだって俺が一から十まで全部でっちあげてるかもしれないぜ?

風潮とか雰囲気みたいな曖昧な物、特に音楽や映画や漫画なんかをどこがどうなっているからおもしろい/つまらないと解説されるのに異様な嫌悪感を示す人は一定数いる。自分で考えたくないなら別に止めはしない。上からこうしろということにハイ分かりましたと言っていればいいんだからそりゃあ楽だな。

「夏はやっぱりジーンズに白Tシャツ!」という誰が決めたかわからないスタンダードをどうやって受け入れていくかは自由だ。自由には責任が重くのしかかるというだけだ。

保存保存