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なぜジーンズを穿くのか(ボロボロになるまで色落ちを楽しむということ)

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身につけるものは不潔であるより清潔なものがいいし、古いものより新しいものが良いし、同じものより新鮮なものがいい。と、おおよその人は思っているだろう。反対はしないしそれが普通だと思う。

 

ではなぜ一部の人間はわざわざジーパン色落ち行為を好き好んで行うのか。

 

長い間放置されていたこの謎を、今回はきちんと分解して解説して説明していきたい。文系的アプローチから「人はなぜジーンズを穿くのか」「色落ちとは何か」を再度問いかけていく。

 

 

ジーンズの歴史(すごくざっくり)

かなりざっくりジーンズの歴史を振り返る。

 

・リーバイさんとヤコブさんがデニム生地をリベットで打ち付けた作業着をつくる(ジーンズの原型)

・丈夫だと評判になり人気が出たので他所が真似しだす

・リーバイス社が501をリリース(最初はサスペンダー仕様のガチ作業着)

・アメリカ好景気の中、一部の反社会的な若者がジーンズを穿くようになる。

良家を出た坊っちゃんが労働階級の着物を着るなんて!と話題に。

・アメリカで戦争反対ブーム勃発。ジーンズは反抗の象徴に。

ラブアンドピースを唱え、みんなが穿くようになる。

・一方そのころ日本は嗜好品や衣類の輸入が増加、アメリカ文化が流入してくる。

・日本でアメリカ人ファッションの真似がブームに。(アイビーブームから)

・ほとんどのオールドリーバイスが日本人によってアメリカ国外に持ち出される。

・それでも日本ではジーンズが不足していた。

???「なら日本で作ればよいのでは」

日本はデニム生地の生産を行っていたりしたため、高品質なものがドンドンできる。

・日本でヴィンテージレプリカブーム

・一部の”根性履き”一派のジーンズを見た外国人「 Amazing !!! 」

・色落ち文化としてアメリカに逆輸入、各国に伝播。

 

以上が「肉体労働に従事していない人が好き好んでジーンズを洗わずに特有の色落ちを楽しむ」という文化が形成・拡散される過程である。 

 

 

色落ちを何故魅力と感じるのか

人間はボロボロのものに魅力を感じるからだ。語弊なく言うと、長い年月稼働してきたことがひと目で分かるものを人間は素晴らしいと感じる、ということだ。しかしこれには「美しい状態が保たれている」という前提条件を加えなければならない。

 

例えば太古の昔に建設されて今まで残ってきている世界遺産の寺院。建設された理由、施工後に辿った過程、そして職人の手による熟練された技術など膨大な量の情報が各所に見て取れる。長い年月を経てなお美しく存在しているモノはそれだけでスゴイ。人間を引きつける魅力がある。

 

では時間の経過がわかるようなボロボロの衣類ならなんでも良いのかというとそれもまた違う。首周りがダルダルのTシャツに魅力はない。美しくないからだ。不潔感が漂う服というのはただ古いだけだ。古さとは、型崩れが起きたり、生地の薄さを露呈するシワが目立っていたり、全体的に染料が抜けて彩度が落ちてしまったりしている様子のことだ。

 

ではボロボロのジーンズは何が違うのか?ここに特有の堅牢さが関わってくる。

 

分厚いデニム生地は型崩れが起きない、というか最初から思いっきり崩れて体にフィットさせるというコンセプトがある。捻れて縮んで伸びてシワが付くことで千差万別の体型に合わせていく…というのがリーバイスが提唱する「シュリンクトゥフィット」の概念であるし、高品質ジーンズは大体これを受け継いでいる。

 

セルビッジ生地を使うジーンズのほとんどは12オンスを超える。これにより、生地の薄さによるシワはほぼできない。ウィスカー、ハニカムなどシワができる場所は限られてくる。ある程度洗濯をしなくてもいい理由はここにある。長時間の着用でもシワシワのヘナヘナになりにくい。生地のハリやシルエットを保ったまま数ヶ月は着れる。

 

そして重要な染料の剥離について。ジーンズの色落ちはインディゴ染料の剥離によるもので、これを防ぐ方法はいくらでもあるが、フェイドプルーフとかそういった加工はほとんど見られない。それは体型の沿ったシワの色落ち、およびインディゴのグラデーションが美しいからに他ならない。チノパンの裾がすすけたり、スラックスがテカテカになったりするのと何が違うのかというのは「美しさ」なのだ。

 

以上の点から、「長い時間の経過が見て取れる」上で「美しい」ため、ジーンズの色落ちには魅力があるし、長い歴史の中で埋もれずにファッションアイテムの位置を確立している。また、同じようなことが革製品にも言えるだろう。「育てる」とか「経年変化」などと呼ばれるこの感覚はいつの時代も一定の層にとって大きな魅力なのだ。

 

 

加工じゃダメなんですか?

草野球は賃金をもらうためにするものではない。野球が楽しいからやるのだ。一方、プロ野球選手が試合を楽しむのは勝手だが、結果が伴わなければ年俸が発生しなくなる。なので結果が物を言う。

 

何が言いたいかというと「結果が全て」なのが仕事とかそれに準ずるもので、「過程を楽しむ」のが趣味なのである。目的と手段が逆転してしまっている状態が趣味なのだ。

 

ジーパン色落ち行為を楽しんでいる人は自分の体型に沿って色落ちをしている過程を楽しんでいる。年月を経て生地が変化していく、変化させていくのを楽しんでいるのだ。確かに「結果が重要」派もいるが、ほとんどの人は「あー変なアタリついちゃった…ま、それもアジかな」なんて具合に自己正当化出来てしまうのはその過程が楽しいからに他ならない。そしてその結果が可視化できるまでにかかるのが数時間とか数日ではなく数年というのもまたポイントで、洗濯のプランを練ったり、わずかな隙を逃さず穿いたり、ローテーションを組んで数本のジーンズを回したり…ということを考えたり実行したりするのに数日や数週間では短すぎるのである。(年単位もなげーなとは思うけど…)

 

色落ち加工職人は違う。新品のジーンズをヤスリや高圧洗浄機や軽石洗濯や化学薬品を駆使して加工するわけだが、まるで誰かが穿いたみたいな色落ちを再現しなければ賃金が発生しない。楽しんでやっているかどうかは分からないが、「このうっかり付けちゃったスリ傷、指定された場所と明らかに違うけど、意外といいアジ出してないスか?」とか言ってもドヤされるだけである。「ちょっとこのハチノス難しそうなんで納期あと一ヶ月延ばしてくださいス」とか言ってもドヤされるだけである。

だからこそ、熟練された色落ち職人による加工ジーンズを穿くというのは実に合理的な選択だ。時間をかけずに清潔で生地の損傷もないユーズド風ジーンズが手に入るのだから。

 

フェイズは不合理を楽しんでいるのだ。ラインで1秒で送れるメッセージを、紙とペンを用意して季節の挨拶とか付けて失敗しないように注意深く文面を書いて封筒に入れて切手を貼ってポストに入れて、しかも相手がそのメッセージを読めるのは数日後…ということをわざわざやるのが楽しいのだ。

 

汚いからせめて洗ってよ…という至極まっとうな意見

ごもっとも!汗と皮脂がベタベタに残留したまま数ヶ月洗っていないジーンズは汚い!しかし実験では以下のリンクように洗っても洗わなくても生地表面のバクテリア数は変わらないことが証明されている。だから…まあ…大丈夫では?

gigazine.net

 

あとこれはほんの例え話なので気にしなくてもいいんだけど、例えばスマートフォンが便器よりバクテリア数が多いなどというのはよく聞く話だ。人間はよくわからない基準によって清潔かそうでないかを決めているものだ。あなたが触っているそのマウス、本当に大丈夫?スワイプした画面、トイレ行った手で触ってないよね?

 

においについては他人に迷惑をかけるので確かに気を付けなければならない。その点は安心して欲しい。我が家ではファブリーズのようなにおいを抑えて殺菌までしてくれる現代テクノロジーの粋とも言えるアイテムがフル稼働している。ジーンズの色落ちに気を使うような細かい人間が、どうして異臭を放置したまま外を歩けようか。異臭を放ちながらボロボロの洗っていないジーンズで平気で外を歩いている人のレイヤーと、色落ちを楽しんであえて洗濯をしない人のレイヤーはまた別の所にある。

 

ちなみに、そこまでして洗濯できない理由としては、前述のインディゴ染料は水溶性があるため水浸しのまま洗濯機でグルグル回ったりなんてしたら全体的に色落ちし、深いグラデーションができなくなってしまうからである。

 

なぜボロボロになるまでジーンズを穿くのか

「長いこと穿いているといい感じになるから」というのが俺がジーンズを穿く理由だ。ワークウェアなりのディティールがあったりするところも魅力なのだが、薀蓄を書き連ねるのは中身がないファッション雑誌みたいになってしまいそうなので控えておく。

 

服には、見た目のオシャレさと同様にギミックの楽しさも付随している。特殊な製造過程のものを着ているという楽しさや、ハイクオリティなリボンやフリルが付いているという楽しさなんかだ。ジーンズの場合は色落ちをする、というのがそのギミックの重要な一部だ。

 

そのギミックを楽しめるだけで生活は豊かになる。毎日が楽しくなる。

高品質・高価格でシルエットがトレンドど真ん中でカッコイイからといって、そういう服を欲しいとは俺は思わない。自分にとってアガる服とそうでもない服があって、できれば毎日ギミックを楽しめてアガるもので固めたい、というだけだ。

 

cte26533.hatenablog.com

 

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